アクアマリンの秘密

瞳に映る君

* * *



昔の俺はたった一度だけ笑ってくれた、出会いの思い出だけをずっとずっと大切にしてきた。
俺と星来の間にあったのは、それだけの出来事。
そんな思い出を俺は毎日思い返しては、強くなりたいと願った。
星来の笑顔を…守れるようになりたくて。






でも…今は違う。
『思い出の中だけ』だった星来に近付きすぎた。
失ったら立ち直れないほどに。



何度も笑っている顔を見た。
何度も泣いてる顔を見た。
…ずっと、一番近くで。



笑っている時は俺も笑ったし、泣いてる時は抱きしめた。
…我慢なんて出来なかった。
涙を浮かべたあいつを目の前にすると、見てられなかったんだ。
乱暴に涙を拭うことしか俺には出来なかったけど、それでも最後にはいつも笑ってくれた。
…出会ったあの日のように。

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