アクアマリンの秘密
「あの…あたし…何か酷いことでも言っているのでしょうか?」

「え…?」

「先程の男の子にもですが…あなたたちにも哀しい表情ばかりさせてしまっているような気がして…。
でもあたしには…何も…思い当たるようなことも…。
本当に…分からないんです…何も…。」



何もなかった。
ただ頭の中がぼんやりと白く霞んでいるだけ。
その中に何が隠れているのかなんて全く見えない。



「…そう…ですね…。あなたは何も悪くありません。
僕の…いえ、僕たちの覚悟がどうやら足りなかったようです。
…まだお休みになってください。
身体は本調子じゃないはずですから。」



そう言って背を向けようとした緑の髪の男の子を引き留めた。



「あ…あのっ…。」

「何か?」

「…誰か…ずっとここにいたのかしら?」

「どうしてですか?」

「…手が…いえ…手だけが…とても温かいの。
それも右手だけ。
それに何だか…ずっと誰かがそばにいてくれたような気がして…。」

「…そうですか。
その『誰か』は僕には分かりかねます。
姫自身でどうか思い出してください。」


最後に一礼して、皆が去って行った。
部屋にはただ一人、あたしだけが残された。

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