アクアマリンの秘密
僕たちがこうして何事もなかったかのように今、平和に生きていられるのは全て…星来のおかげだった。
星来が自らの記憶を捨ててでも僕たちを救いたいと強く願ってくれたから。
だから僕たちは…辛いだとか悲しいだとか、そんな気持ちを抱いてはならないのに…。




「星来だからだね、きっと。」

「え…?」


少し上ずった声で僕の言葉に反応する桃依。


「星来だから…僕たちはこんなに悲しい。
蒼刃が星来に対して抱いている気持ちと、僕が抱いている気持ちは違うけれど…
それでもやっぱり…悲しい。
僕たちと過ごした全ての時間が忘れ去られてしまったことが…。
自分勝手な言い分だって…ちゃんと分かってはいるけれど。」

「緑志の言う通りかもしれないな…。
今まで築き上げてきたものが一気に崩れ去ったみたいで…悲しい。
星来とは…なんだかもう元の関係には戻れなくなったみたいだね…。」

「…折れてしまわないだろうか。」

「え…?紫紀…どういうこと?」

「折れてしまいそうだな…蒼刃が。」

「折れる…。」

「蒼刃は決して弱くない。
だが…想う気持ちが強い分だけ…星来の言葉は深く突き刺さるだろう。
ただでさえ弱った蒼刃の心をこれ以上ないほどに抉る…。」

「…そうだね…。」

「想い続けることが辛いから想いを断ち切るか…。
それとも断ち切ることが出来ないから想い続けるか…。
記憶がない星来とどう向き合うかは蒼刃が…そして俺たち自身が決めることだ。」

「…うん。」


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