アクアマリンの秘密
【蒼刃side】



剣が手から滑り落ちた。



「…っ…はぁっ…はぁっ…。」



汗を手で拭う。
そして剣を拾った。

俺は無駄に訓練を繰り返していた。
こうして動いていれば何も考える必要はない。






「…ご飯はちゃんと食べてるのかい?」

「…ああ。」



俺は振り返らずに短くそう答えた。
相手は分かってる。



「何しに来た、緑志。」

「『姫様』が心配していたよ。」

「『姫』の心配なんかいらねぇ。」

「…顔を合わせてみたらどう?
そしたら星来も何か思い出すかも…。」

「…んなこと起こるわけねぇんだよ…。」


分かってる。
今俺がしていることは逃げだってこと。
ただの現実逃避でしかないことも。



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