アクアマリンの秘密
『今日ね、ボク決めたんだ。』

『何を?』


あたしも目を瞑って答える。
こんな風に心の中で人と会話したことは初めてだったから、声が届いてるか不安だった。



『あ、ちゃんと星来の声が聞こえてるよ。
こういう風に会話することができるのも、星来の力なんだね。』

『人間相手でこういう風に話したのは桃依が初めてだよ。』

『そうなんだ…
それはすっごく嬉しいなっ♪
じゃあ…ちょっとこのまま聞いててね。』

『うん。』


桃依の頬に触れたあたしの手を上からぎゅっと握る桃依。



『あのね…
ボクには家族がいないってこと…星来も知ってるよね?』


あたしは頷く。


『ボクは今まで…
それを特別悲しいことだとかそんな風に思ったこと、なかったんだ。
だって…ボクには家族ってものがいた記憶がほとんどないんだもん。
もちろん…泣いてばかりの日々もあったよ。でもそれは…本当に昔。
ボクには『あって当たり前』の家族がいないことが『当たり前』だった。
だからね…失うことが怖い存在なんて、今まで誰一人だっていなかったんだ。』


あたしはぐっと唇をかみしめた。
何も…言えない。


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