アクアマリンの秘密
蒼刃に抱きしめられて安心したからこそ出て来た言葉。

あんなに言うのを躊躇っていたのに、こんなにも簡単に口に出来たことが…すごく不思議。





「…泣きながら言うんじゃねぇよ…。
なんだか俺が悪ぃことしたみてぇだろ…?」

「そっ…だっ…だって…
蒼刃がいなくなっちゃったらって考えたらあたし…寂しくて…。」

「寂しかったのは俺だっつの。
俺は忘れねぇからな。」

「何を…?」

「お前に忘れられたことも、お前が勝手に封印の魔法を使うって決めたことも。」

「ちょっ…そんなのは全部…。」

「お前がくれた言葉も、お前の涙も笑顔も全部…俺は忘れない。
忘れられねぇから…諦められなかったんだ。」

「え…?」

「お前が記憶を失うっつーのは…俺とおまえの関係が…ナチュラルアースでもう一度会ったときに戻るってことだろ…?」

「…そうだね…。」

「『戻るだけ』なんだって思えば…記憶を失ったお前ともう一度新しく関係を築き直せるかもしれないって思った。
でも…それは出来なかったんだ。」

「どうして…?」

「なかったことにしたくなかった。
忘れたい思い出なんて一つもなかった。
お前は…俺を強くしてくれたからな。」



そう言って、いつもとはちょっと違う、優しい笑みを浮かべた蒼刃。
その笑顔にあたしもなんだか嬉しくなって微笑んだ。



「覚悟しろよ、星来。」

「え?何の覚悟?」

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