アクアマリンの秘密
* * *



足音がしないようにゆっくりと後ろから近付いた。
有難いことに、噴水がざーっと一定の音を奏でている。
…絶対バレない。





「星来。」

「へっ!?」

「…足音でバレるっつの。俺を誰だと思ってんだよ。」

「え…だって噴水があるのに…。」

「お前の足音なんてすぐ分かる。
…で、なんだよ?何かあったのか?」

「え?な…何もないけど…。
何かないと、蒼刃のところに来ちゃダメなの?」

「はぁ?そういうわけじゃねーけど…。」

「っていうか蒼刃こそ、こんなとこで何してるの?」

「何って…別に…休憩。」

「休憩?こんなにお花いっぱいの場所で?」

「…悪ぃかよ。つーか別に花が好きだからここにいるわけじゃねぇし。」

「え?そうなの?蒼刃、よくここにいるからお花が好きなのかと…。」

「はぁ!?つーかなんで俺がよくここにいるって…。」

「だってあたしの部屋からこの中庭、よーく見えるんだもん。」

「…マジかよ…。」

「記憶がない時もね、蒼刃の悲しそうな背中をあの部屋からずっと見てたの。
…ってなんだかもう懐かしいね。あたしに記憶がなかった時なんて。」

「そうか?俺はあの時の気持ちを今でも鮮明に思い出せるくらいに痛ぇ毎日だったけど?」

「だからっホントにごめんってば!!」

「あー…本当にお前…頼むからもう二度とあんなことすんなよ。
忘れられるのなんてもうごめんだ。」

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