恋色の紙ヒコーキ
「ちょ…なっ…何やってんの!?」

「え?海に愛を叫んでみた♪」

「そういうのやめてよ!!
人はいないけど…でも恥ずかしいから!!」

「別にいいだろー?
誰も見てねぇし聞いてねぇし。
ま、梨絵だけが聞いてればいいしな。」

「もーっ…そういう恥ずかしいこと、よくサラッと言えるね…。」

「サラッと言ってるように見える?」

「うん。」

「ならいいけど。」

「え、何その『ならいいけど』って。」

「別になんでもねぇよ。」


そう言ってごまかした。
本当はさっき言ったみたいに俺に余裕なんてもんはないんだ。
ちょっとだせぇくらいに。

梨絵は俺の言葉に少し怪訝そうな顔をしたけど、すぐに笑顔になった。


「久哉はいつだって余裕でいるような気がしてたの、あたし。」

「はぁ?」

「だって、はるに何かあったときとか、あたしデート中でもはるんとこ行っちゃったりするじゃない?」

「あー…まぁな。」

「そういうの、怒らないで、行って来いって言ってくれるから…。」

「怒ったって仕方ねぇじゃん。
大体そういう場合ってはるの緊急事態だし。」

「それは、まぁ…そうなんだけど…
ほら、よくあるじゃん。
『彼氏と友達、どっちが大事?』なの。
そういうのを言わないで、なんか…どしっと構えてくれてるなーって…
一応あたしの中ではそう思ってたんだけど…。」



梨絵のイメージの中の俺はかなり出来る男だった。
ま、梨絵がそう思っててくれるんならそれに越したことはねぇけどな。

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