恋色の紙ヒコーキ
陽がすっと離れる。
ちょっとだけ落ち着きを取り戻したあたしには、観客席の声が届いてくる。


「ねぇ!!長くない!?
ってかホントにキスしてたのかなぁ?」

「まさか…!!だって舞台だよ?」

「でも…二人って付き合ってるし…。」

「まぁ…ありえないことではないか…。」

「にしてもうらやましーっ!!
陽くんにキスされるなんてさ!!」

「でもはるだから憎めないよねー。」

「分かるそれ!!」


え…?ちょ…結構ホントにキスしてたことになってる…?


「シェイル、さぁ、帰ろう。」


そう言って差し出された手はいつもあたしに向けられてくる手と同じで、あたしは迷わずその手を握った。

もうあたしもシェイルじゃなくなってる。
普通のただのあたしに戻ってる。

あーあ…
あんだけ練習してきたのは何だったの?
今日アドリブで何とかなっちゃったし…

少し不満もあったけど…
でも…
梨絵と陽がラブラブしてるのは正直、劇の中といえどあんまり見てていい気はしなくて(それはあたしだけじゃなく安藤も。)…
だから少しだけ…安心してもいたり…

あたしが頭の中でいろいろ考えているうちに、いつの間にか劇は終わってた。


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