恋色の紙ヒコーキ
「いっ…たぁ…。」


誰にも聞こえないくらい小さな声で言った。
ボールから手が離れた瞬間にジン…とくる痛み。
思わず一瞬だけ顔が歪んだ。

けど…誰にも見られてない…よね?多分。


あたしはプレイに集中した。

負けるわけにはいかない。







でも…
健闘虚しく、あたしたちは2点差で負けた。


「ありがとうございました!!」


結果は結果であたしとしてはもちろん悲しかったんだけど…
やることはやれたし、相手が相手だったから(いつも優勝してるとこ)ある程度、満足な試合だった。
この痛む手首を除いては。



「はる先輩!!お疲れさまでした!!
大丈夫ですか…さっきの…。」

「あ、へーきへーき。
全然大丈夫だよ。」


あたしのところに寄ってきたのは小林くん。
余計な心配をかけたくなくて、咄嗟に嘘をつく。


「でも一応…怪我診てもらった方が…。」

「全然大丈夫だって。
大したことないから。
家帰ったら一応なんかシップとかするし。」

「嘘つけ。」

「へ?って痛っ…!!」


あたしの右の手首が不意に後ろから掴まれる。

あたしは思わず後ろを振り返った。

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