無音のココロ音
君と出会った日
ある日の正午過ぎ。寝起きの頭を覚ますような出来事が起こった。
 今日は祝日。学校は休みなので、今日は寝て過ごそう、と思っていた時だった。県外に仕事に行っている父から郵便物が届いた。着払いで。
 土産か?と思って、大きな段ボール箱のガムテープを切り、中身を拝見した。最初に目に入ったのは、二つの封筒だった。
 一つは父からの手紙。内容は、「親戚の子を預かることになった。こっちは忙しくて面倒が見れないから、少しの間だけ世話してやってくれ」とのこと。そして何故か、メモ帳が同封されていた。
 二つ目は、自分の通っている高校からの特別通学許可証。初めて見る書類だったので、詳しく見ようとは思わなかったものの、氏名欄が目に入って気が変わった。「七葉 詩音」と記されている。他人の名前。父の手紙の内容を見直してやっと理解した。
 ――――俺が親戚の子を預かって、一緒に学校に通えってのか?しかも女?
 いや、理解できていなかった。混乱。
「何言ってんだ?このクソ親父」
何時頃来るんだよ?もうすぐ来るのか?片付けとかしないと、人に見せられるような状況じゃねえってのに。
 段ボール箱の中には、他に女子生徒用の制服や生徒手帳、鞄など、学校生活に必要な物が色々と入っていた。一通り見ると、封筒以外は箱に戻して立ち上がった。
郵便を受け取ってから約二十分。自分がまだ玄関にいることに気付き、慌てて居間に戻る。せめて一部屋は人が使えるようにしなくてはならない。と、言っても、あと一部屋しかない。
物置にしていて誰も使っていない部屋だったが、ベッドやタンスなど、寝室として使用するのに必要な物は揃っていた。父が先日急に送って来たのだ。いつか使うかもしれない、と言って、何のために送って来たのかは教えてくれなかったが、多分、親戚の子を預かることは、その時から決まっていたことなのだろう。
どうやら自分の休日は、他人のために、しかも忙しく終わってしまいそうだ。
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