無音のココロ音
                   ♪

 放課後、教室の生徒が減り始めるのを待って、浩太も教室を出た。
 目指す先は、特別学級の教室。
 実はさきほど、昼の休憩時間に校長に呼び出され、せめて教室に迎えに行ってやれ、と言われたのだ。ちなみに、もう放課後に来る必要はないとも言われた。恐らく、伝えたかったことは、これなのだろう。
 勿論一度は断ったが、学校の案内もまだしていないし、家までの道のりも分からない、と聞かされれば断るわけにはいかない。もし断われる者がいたとしたら、
「俺だけだ!」
 浩太は急速に方向転換した。
 ふざけるな。
 同居? 何だそれ?
 嫌に決まってんだろ。帰って来るな。
 そう思いながら、校舎を早足に出た。
 知らない、知らない、あんな女のことなど知らない、寮で暮らせ、寮――――
「―――で……!」
 思わず立ち止る。
 理解できなかった。というか、したくなかった。
『何』
 と書かれたメモを持った詩音がいた。校門に。
「何をしている」
『立ってた 悪い?』
「いやいや、理由なくそこに立ってる奴がいるか。誰か待ってるのか? 友達でも出来たとか?」
『死ねば?』
「違うか」
 返事が理解し辛い。
 なんつー性格してんだ、この子。
「じゃあ、何でそんな所に突っ立ってんだよ。というか、よく迷わずここまで来れたな」
『馬鹿にしないで 階段を下れば大体道はわかるでしょ』
「あ………」
 確かに、よく考えればそうだ。
 特別学級の教室は二階の職員室の隣にある。
 そこから近くの階段を下りれば、正面に靴箱が見える。
「そうか……それで、ここで何をしてるんだ?」
『わかるでしょ』
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