無音のココロ音
「俺を待ってたのか」
『待ってない』
「じゃあ何」
『帰り道を知らない』
「だから、一緒に帰るために待ってたんだろ?」
『変な言い方しないで まだそんな関係じゃない』
「まだ、って何だよ。そうなるのか?」
『ならない 勘違いしないでってこと』
「してないよ。勘違いしてるのは君だ。まあ、勘違いさせようとしたのは俺だけどな」
『おちょくった?』
「おう。バレたか」
『ほんと 死んでよ』
「やだよ。誰の家に居候すると思ってんだよ」
『変態』
 俺に対する詩音の認識は、変態で死んでほしい、ということらしい。散々だな。
「まあ、帰るか」
『当たり前でしょ お風呂入りたい』
「はいはい。分かりましたよ、お嬢様」
『そういう、わざとらしい態度止めて』
「心の底から思ってるから、そろそろここを離れよう。大分注目されてるぞ」
『話をそらさないで』
「そらすというか………マジでやばい」
 下校しようとする生徒達の視線が、完全に自分達に向いている。
 しかも、俺だからな………
「ちいっ……こっち行くぞ」
 浩太は遠慮なく詩音の手を取り、駆け出した。

「よし、ここまで来れば」
 詩音は後ろで、荒い息をしている。
 一応、息をする時の音は出るんだな……、と意外な発見をしてしまった直後、詩音が顔を上げた。
 驚いて見ていると、メモに何かを書き始めた。
 見守っていると、『ここ どこ?』と書かれたページが差し出される。
「ああ、ここか。分かるだろ? 大体。ここだったら、普通に通学路を帰るよりは、人目に付きにくいはずだ」
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