無音のココロ音
 浩太は言いながら、道沿いに設置されたベンチに腰を下ろした。
 何か、もう疲れたよ。
『分からない 初めて来たもの』
「そうなのか? まあ、ここに来たのが初めてならそうかもしれねえけど、商店街ぐらい、そっちにもあっただろ?」
 その問いに、詩音は眉を顰めた。
 目の前に蟠る人混みを視界に収めながら、首を傾げている。
「なかった、のか?」
『あったかもしれないけど』
 そこで切って、続きを次のページに書き出した。
 メモ帳だと、会話に不便だな。
 差し出されるメモ。見ると、
『外に、あんまり出たことなかったから 学校という場所も初めてだった』
 外に出してもらえなかった? 学校も行っていなかった?
 何だそれ?
 正直意味わからなかったが、そこまで深く関わる気にもならなかったので、話を変えることにした。
「そうだ。買い物するか?」
『かいもの?』
「ほら、服とか靴とか、ほとんどないだろ? 生活に必要なもので、俺と共有できないものもあるし、いい機会だから買っておこう」
『おかねは?』
「あるよ。金はほとんど持ち歩く主義なんだ」
『あっそ』
「よし、そうと決まれば、あそこに服売ってるから、パジャマとか、いるだろ?」
『うん』
 立ち上がった浩太は、なぜか恥ずかしそうに俯いている詩音をつれて、商店街に入ってすぐの若者向けの服屋に入って行った。
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