無音のココロ音
「いつつ……。何で俺は殴られた……?」
 初めて顔面を殴られた。その痛みに涙を浮かべながら、浩太は今、無言の少女と共に通学路を辿っていた。
会話は無い。浩太からすれば、話しかけたいのは山々なのだが、それをさせないピリリとした空気が隣を歩く詩音から放たれていた。
「詩音さーん?」
『何』
「何だかコメントが短的になってきましたね。っていうか、何で怒ってるんですか?」
突然、詩音が『別に』と書かれたメモをひらひらと見せながら立ち止まった。
「どうした?」
 片手で見せ続けるメモとは別に、もう一枚、別のメモが握られていた。握りしめられて、クシャリとしわを畳んでいる。
「何だよ?」
 一行に動き始めない詩音を急かそうとする。すでに遅刻は目の前だ。
しかし、詩音は目を合わせようともせず、何かをメモに書き足している。
覗き込もうとすると、拳が飛んできて、寸手手前で避けた。
しばらくすると、詩音は諦めたようにページを一枚切り取り、浩太に押し付けるようにして渡した。
「お、おい……」
 さっさと歩き出した詩音に追い付くために駆け出しながら、メモの内容を確認――――
 ――――死んでください byわたし
「………何、これ……」
 少し心を傷付けられた浩太は、癒しを求めるように傷付けた本人の背中を追いかけた。

                   ♪

「お待ち」
 なんとか学校に辿り着くと、校門で誰かに呼び止められた。
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