レゾンデートル
あの時の話




目が覚めると、そこは見慣れた場所だった。


「また、死ねなかった」


呟けば反響する。
自分の周りには赤色。

一体どれだけ自分を傷つければ気が済むのだろう。
世間一般では自虐行為と言われているが、自分の中では自慰行為となんら代わりない。
自身を傷つけることを快楽とし、それに溺れる。それの何が悪いのか。


あの人は、こんな自分を見てどう思うのだろう。
呆れるだろうか、気分を害するだろうか、嫌いになるだろうか。

嫌われたくなんかないくせに、今日も私は自分を傷つける。


何か大切なものをたくさんなくした気がする。
今の自分に残っているのは、手首の傷だけだった。





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