レゾンデートル
ジャン、と音を鳴らして曲が終わった。
相変わらず辺りは拍手喝采。
愛琉と来琉も拍手をしている。
そして一呼吸おいた雛春くんは私に気付いたようで、笑顔で手を振ってきた。
「桜さん!久しぶり!」
にこにこと笑いながら手を振る雛春くんに、私も笑顔で手を振る。
そんな私を見て、愛琉が「知り合いだったんだぁ!」と目を輝かせる。
「桜さん、ギター弾いてくださいよー!」
朗らかに言う雛春くんに、思わず固まる。
私が固まっていると、来琉が私の顔を覗き込む。
「なに、桜ギター弾けんの?」
うわぁぁ期待してないか!?この顔!!
私はたどたどしく答える。
「いや、ほんとちょっとだけ…」
私がそう言うと、今度は愛琉が「すごー!かっこいいね!」と期待に満ちた顔で私を見た。
頼むからそんなに見んな。
そんなことを考えていた私に気が付いたのか、雛春くんは苦笑いをしながら私に楽譜を渡してきた。
「じゃあまた簡単な楽譜にしますね」
手渡された楽譜は、書き込みがたくさんされている。
勉強熱心なんだろうなと思いながら、私はギターに手を伸ばした。
.