レゾンデートル



ジャン、と音を鳴らして曲が終わった。
相変わらず辺りは拍手喝采。
愛琉と来琉も拍手をしている。

そして一呼吸おいた雛春くんは私に気付いたようで、笑顔で手を振ってきた。


「桜さん!久しぶり!」


にこにこと笑いながら手を振る雛春くんに、私も笑顔で手を振る。
そんな私を見て、愛琉が「知り合いだったんだぁ!」と目を輝かせる。


「桜さん、ギター弾いてくださいよー!」


朗らかに言う雛春くんに、思わず固まる。
私が固まっていると、来琉が私の顔を覗き込む。


「なに、桜ギター弾けんの?」


うわぁぁ期待してないか!?この顔!!
私はたどたどしく答える。


「いや、ほんとちょっとだけ…」


私がそう言うと、今度は愛琉が「すごー!かっこいいね!」と期待に満ちた顔で私を見た。
頼むからそんなに見んな。

そんなことを考えていた私に気が付いたのか、雛春くんは苦笑いをしながら私に楽譜を渡してきた。


「じゃあまた簡単な楽譜にしますね」


手渡された楽譜は、書き込みがたくさんされている。
勉強熱心なんだろうなと思いながら、私はギターに手を伸ばした。





.
< 16 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop