レゾンデートル



「いやぁすごい!ほんとすごい!」


あっはは!と笑いながら、愛琉が麦茶を机に置く。

あのあと、私達は1曲演奏してから、愛琉の提案で愛琉と来琉の家にお邪魔することになった。
雛春くんは遠慮していたけれど、愛琉にほぼ強制的に連れてこられたのだ。


「まじすげぇよ、感動した」

「はは、有難うございます」


お互い自己紹介はしたけど、雛春くんはまだ打ち解けていないようだ。
意外と人見知り激しいとか?


「そういえば雛春くん、優羽里ちゃんは?」


私が、雛春くんが答えやすいであろう質問をすると、雛春くんは一度目を見開いて驚き、そして顔を伏せた。


「…雛春くん?」

「あ、優羽ちゃん、は…」


寂しそうに微笑む雛春くんには、何かあったようだ。
聞いて良いことなのか悪いことなのか、いまいち判断しきれない私は、顔をしかめるしかできなかった。

すると、突然来琉が口を開いた。


「おい、雛春」

「へ、?」


突然名前を呼ばれて、雛春くんは伏せていた顔を勢いよく上げた。


「お前なぁ、うじうじしてんじゃねぇっつの!さっさと言え馬鹿!あん?」

「え、へ?は、はい!」


喧嘩腰に雛春くんに詰め寄る来琉に、雛春くんは怖じけづきながら返事をする。
来琉の気迫に、私も思わず生唾を飲んだ。が、


「…で、なんの話だ?」

「来、なにしてんのさ」


きょとんとしながら問う来琉の頭を、愛琉は呆れながらぽんと叩いた。





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