レゾンデートル



「優羽里って誰?」


きょとんとしながら私に問い掛ける来琉は、ホントに天然で言ってのけたのだろう。

でも私も優羽里ちゃんがどんな子なのかイマイチ分からないから、来琉に説明できない。

そう思っていると、雛春くんが口を開いた。


「優羽里は、おれの幼なじみの女の子です。
家が近所だったから、昔から一緒にギターとかして遊んでたんですけど、
優羽里の家はかなり裕福で、母親が有名なピアニストなんです。
それで優羽里も昔からピアノを習ってて、かなりのレベルなんです。
だからか、優羽里の親はギターを優羽里がやることを良く思ってないんです」


つらつらと並べられた言葉は、すごく気になることがたくさん入っていた。
けれど悲しそうに微笑む雛春くんを見てしまったら、何だか何も聞けなくなってしまう。


「でさ、結局雛春くんはどうしたいわけ?」


静まり返った部屋の中に、愛琉の声が響いた。
愛琉の声に反応して、雛春くんは再び口を開く。


「優羽ちゃんを、助けてください!
優羽ちゃん、今外に出してもらえないんです!
おれのせいで…だから、いてくれるだけで良いから、助けてくれませんか?」


強い目をしながら私達に訴える雛春くんは、真剣そのものだった。


「なんて、初対面の人達にこんなこと言っても仕方ないですよね、すみません」


すぐに俯き自嘲的に笑う雛春くんの肩を、来琉が強く掴んだ。





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