レゾンデートル
「…と、あまりのんびりもしていられないようですね」
優羽里ちゃんはそう言いながら、部屋の窓を開けた。
バサバサとカーテンが揺れる。
真夏の日暮れの空気がジットリと体に纏わり付く。
優羽里ちゃんは、窓枠に足をかけた。
「ちょ、優羽里ちゃん、何してるの!?」
まさか。
いや、ここ3階なんだけど。
さすがに死んじゃうんじゃないかな。
「ふふ、脱走です」
清々しいほど眩しい笑顔に頭痛がした。
ああ、本気なのだろうか。
「大丈夫、下は植木と芝生ですから」
輝いた目をしながら言う優羽里ちゃんに、何も言えなくなる。
私と雛春くんが頭を抱えていると、愛琉が突然優羽里ちゃんを抱き上げた。
「へ?え?」
優羽里ちゃんが顔を真っ赤にしながら状況を飲み込もうとしている中、愛琉は良い笑顔で微笑んだ。
「オッケー、オレ、そういうガッツのある子好きだよ」
まさか。
やめてよね。
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