赤ずきんと狼
………
人として、言ってはいけない言葉が聞こえた。
よーく思い出してみよう。
もしかしたら、私の聞き間違いかもしれない。
…………………
しかし何度思い返しても、やっぱり彼が言った言葉は『ブス』としか聞こえなかった。
有り得ない、
有り得ない、
有り得ない。
なんなの、この人?
あ、そっか…
この人バカなんだ!
そっか、そっか!
なーんだ!!
いやいやいや、
さすがにバカでも礼儀は知ってるよ。
「え?ひっどーい!」
女はケラケラ笑っているが、さっきまでにぎやかだった教室の空気が、一瞬にして凍った。
「うざい、話しかけんな」
そう冷たく言い張る隣の彼に、私は目が離せられなかった。
「つーか、お前ら香水付けすぎだし。臭ェよ」
女を相変わらず冷たく睨む彼に、女は空気を読んで自分の席に戻って行った。