赤ずきんと狼
暫くの間、教室に冷たい空気が流れていたが、その空気を変えたのは、ある男の子だった。
「おっはよー!」
前の扉から入ってきたテンションの高い男の子は、隣の彼を見るなり、笑顔でこちらに向かってきた。
「あーっ!総くんだ!また同じクラスだねっ!」
ケラケラ笑う姿は、とっても可愛かった。
笑うとき、時折見える八重歯がなんとも言えぬ可愛さだ。
赤茶色の彼の髪は、寝癖で所々はねており、そんなところも可愛い。
ちらりと隣の彼を見ると、大きくため息をしていた。
「総くんとまた一緒とか…僕たちやっぱり運命なのかもね!」
「んな訳ねェだろ、うっせーから黙れ…」
総くんと呼ばれた隣の彼は、頭を抱えて机に伏せた。
「もー!総くん照れ屋なんだからー!」
これほど空気が全く読めない人は初めて見た。
逆に尊敬する。
私はそんな二人の会話を見ていて、ついついクスッと笑ってしまった。
あ、やばい
そう思っても遅い。
「あ、ねえねえ今笑った〜?」
まるで子犬のように目を輝かせて聞いてくる。
「…笑ってんじゃねェよ、」
低い彼の声が、胸に突き刺さる。
「あ、ごめんなさ………い」