赤ずきんと狼


暫くの間、教室に冷たい空気が流れていたが、その空気を変えたのは、ある男の子だった。



「おっはよー!」

前の扉から入ってきたテンションの高い男の子は、隣の彼を見るなり、笑顔でこちらに向かってきた。

「あーっ!総くんだ!また同じクラスだねっ!」

ケラケラ笑う姿は、とっても可愛かった。
笑うとき、時折見える八重歯がなんとも言えぬ可愛さだ。
赤茶色の彼の髪は、寝癖で所々はねており、そんなところも可愛い。


ちらりと隣の彼を見ると、大きくため息をしていた。


「総くんとまた一緒とか…僕たちやっぱり運命なのかもね!」

「んな訳ねェだろ、うっせーから黙れ…」

総くんと呼ばれた隣の彼は、頭を抱えて机に伏せた。

「もー!総くん照れ屋なんだからー!」

これほど空気が全く読めない人は初めて見た。
逆に尊敬する。

私はそんな二人の会話を見ていて、ついついクスッと笑ってしまった。


あ、やばい

そう思っても遅い。


「あ、ねえねえ今笑った〜?」

まるで子犬のように目を輝かせて聞いてくる。

「…笑ってんじゃねェよ、」

低い彼の声が、胸に突き刺さる。


「あ、ごめんなさ………い」







< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop