赤ずきんと狼
もうこのまま、息が出来ず死んでしまうのではないかと考えていたとき、突然雅くんが私から離れた。
「なんだよ総くん、今いいかんじだったのに〜!邪魔すんなよ〜」
橘くんが雅くんを引き離してくれたらしい。
さっきまで座っていた橘くんが、私たちの横に立っている。
「雅、遊びすぎだ」
「だってー!梨沙ちゃんの反応が可愛いから!」
ケラケラ笑う雅くんに、うまく頭が回らない。
「…?」
「お前本物のバカだな…」
…バカにバカって言われたくない!
とか言いながら、もしかしたら橘くんのほうが頭いいのかもしれない…
「バカじゃない!」
「バカだ」
「バカじゃないもん!」
「そうやって言う奴程バカなんだよ」
むー……
悔しい!!
私は口喧嘩で彼に勝てないと判断し、話題を元に戻した。
「…そ、それでさっきのって…?」
「雅に遊ばれたんだよ」
…遊ばれた?
「だって梨沙ちゃんってさ、手握っただけで顔赤くなるし、顔近づけたたら真っ赤になるし、虐めがいがあるじゃん?」
………なるほど、
ってオィィィィィイイ!!
雅くんって怖い!
実は黒いんだ!
「…雅くんって、怖い」
「そんなことないよ?僕優しいし」
ニコッと笑っても、怖い。
それに自分で優しいとか言っちゃダメなんだよ!
先程なら可愛いな〜と思うだけだっただろうが、今は時折見える八重歯まで、怖くてたまらない。
自然と顔が強張った。
「ブス」
「んなっ!失礼なっ!」
「そうだよ、それに可愛かったよ?恐怖で潤んだ梨沙ちゃんの瞳に、欲情しちゃった!」
ママ、赤ずきんね、お使い行きたくないの。
だって狼に食べられたくない。
だけどママはそんなこと知らないから、いってらっしゃいって笑顔で言うの。
正直、狼のいる学校に三年間生きていられるのか、不安でいっぱいになりました。
毒舌な狼と、腹黒い狼。
二匹の狼に出会っても、赤ずきんは、生きてお家に帰れるのかな?