今夜,君と…。
「どおゆうこと?!!」

昨日とは真逆に怒り狂う春。

仕事を終え2人で俺の部屋に帰ってきた。


…てゆうか帰ろうとしたら春が付いてきた。
この際ケリをつけるねん!!


「だ〜か〜ら!しばらく考えたいんやって。」

「昨日は許してくれたのに,何でそんなすぐ変わるん?」

「昨日はお互い冷静じゃなかったやろ?だからゆっくり考えるの!!」

「はあ?意味わからん…。」

「………てゆうか,俺気になる奴おるんやわ。」

「何それ?」

明らかに春の声が変わった。

いつもみたいな明るくフワフワした声とは全くの別物。

「誰?気になる奴って?新地の女?」

「…うん。」

「どこの店?てか誰?」

「言う必要ないやろ?店の名前も忘れたし。」

「浮気者!裏切り者!!陽のあほ!!!」


春は怒ったまま泣いてたけど,俺はその涙に怒りさえ覚えた。

自分のしてきたこと棚にあげて…。


「帰って。もう答えも出たし。」

俺は玄関のドアを開けた。

少し冷たい風が部屋に流れこみ,春の独特の香水の匂いが薄まる。

「何それぇ〜?むかつく〜うぅ〜!」

「近所迷惑やからはよ帰って!今までありがと!」


無理やり春を押し出すと,最後にめっちゃ歪んだ顔で睨まれた。

「あたしは別れるつもりないから!!!」


小さくなってく春の背中を見届けたら,俺の中の春の存在も小さくなった。










…終わった。





そう思ってたのは俺だけで。





なんでもっとしっかり説得せんかったんやろう。


土下座してでも,泣きわめいてでもしっかり別れなあかんかったのに。












ごめん…









ごめんな。













ナナセ…。

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