Coffee?
「だから、由宇希に連絡できなかった。
ていうか、しなかったんだ。」


「どうしてしなかったの?」


「…この街に戻ってきてしまいそうだったから。」



初めてみるような、哀しみを湛えた目。



海斗は苦しそうに笑った。



「ゴメン、結局俺が弱虫なんだよ。」



何も由宇希に迷惑かけなくてもよかったのにね。



震える声で呟かれると、もう責めることが出来ない。



「ホント、悪かった。」


「…もう、いいよ。」



あたしはギュッと手を握り締めた。



「理由、わかったから、もういいよ。」


「うん。」



言って、海斗は起き上がる。



「ありがと。
………ねぇ、抱きしめていい?」



待って、駄目。



今、優しくされるとあたしが無理。



ブンブンと首を振ったにも関わらず、海斗はあたしをぐいと引っ張った。



あたしは少し体温の高い腕に包まれる。



もう、限界。



あたしの目から、涙が決壊した。



一粒こぼれたら、もう止まらない。



次々と雫が落ちてくる。





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