みどりの日
「おかえりなさい」

 そう言って出迎えてくれたのは、かれこれ二年前から住居を共にしている少女だ。

 市民登録用のエンジンカードどころか、衣服すら纏っていなかった彼女は、唯一自分の名前だけしか覚えていなかった。

 素性もしれない者を養えるほど裕福な身分ではないが、優れた葉、優葉と名乗ったその少女にどこか惹かれるものを感じたのだろう、当時の自分は。

 否、それは今でも変わらない。

 そしてその感情に疑問を持たない程度に、自分達は上手くやれているとも思っている。
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