『その声でささやいて』キケンな教師と危ないカンケイ
一心不乱に足を動かし続けた。
霞む視界。
息苦しい……
それでも走り続けた。
マンションに着くと、真っ先に向かったのは洗面台。
蛇口を捻り、勢い良く水を出すと唇を水でジャブジャブと洗い流した。
洗っても洗っても、あの感触が拭えない。
それが嫌でタオルでゴシゴシと強く擦るが、意味を為さなかった。
葉山が汚い訳ではない。
嫌いな訳でもない。
ただ……相手が先生でなかっただけの事。
たったそれだけの事なのに…
『ファーストキス』と云うものが、どれだけ“重い”ものなのかを思い知った。