炭酸金魚水
「そうめんできたよー」
菜月という名の私の唯一の妹は、そう言いながら階段を上ってくる。
菜月が階段を上がる度に、フローリングの階段特有の空洞で乾いた音が廊下に響いた。
ぱきり、ぎし、と小刻みに空気を振動させている。
私は無気力のまま立ち上がった。
僅かに視界が揺れ、軽い貧血に似た症状を起こし、倒れ込みそうになるのを必死で堪えた。
ずっと同じ姿勢で寝ていたのだから当たり前の事なのだが、やはり何事も急にこられると驚くものである。
冷房のない私の部屋は窓が開け放たれ、蝉のやかましい鳴き声で満ちていた。