炭酸金魚水
呼吸を整えるための小さな溜め息をして、私は昼食の為に部屋から出ようとした。
昨日の昼食も、一昨日の昼食もそうめんだったのだが、御中元で大量に届いたのだから仕方がないと思いながら食べていた。
腹持ちは悪いが、ツルリとしたのど越しを私はまぁまぁ気に入っていたので、そこまで嫌ではなかった。
菜月は、"味が薄い"などと言ってあまり好んではいないようであったが。
毎回ボトルから注いだままの麺つゆを、水で薄めもしない。
夕食は母が毎回きちんと作ってくれているのだが、用事があって作れない時は、私と菜月でそうめんを茹でて食べていた。
私と菜月の食生活はそうめん一色になりつつあった。
そういえば昨日の夜もそうめんだったよなぁ、とぼんやり思い返しながら部屋を出ようとした時だった。
いきなり菜月が私の部屋に飛び込んできたのだった。
まだ階段の中腹にいると思っていた私は面食らった。
菜月は汗に濡れたワンピースのままで私に抱きついてきた。
私を離さないよう、逃げないようにと力強く抱き締めていた。
私は菜月の謎の行動にただ、呆然とする事しかできなかった。