炭酸金魚水

どのくらい抱きつかれていたのだろう。

現実の時間はほんの僅かしか流れていない筈なのだが、私と菜月の間に流れる時は随分と経ってしまったような気がしてならなかった。

菜月の息遣いと蝉だけが、生き物として存在しているような重い沈黙が続いた。

いくら考えても人の気持ちなど読めるはずのない私は、答えを見いだせないまま菜月を見つめていた。

しかしいくら待っていても菜月は口を開こうとしなかった。

そんな菜月に苛立ち、しびれを切らした私がどうしたの、と声をかけようとした時だった。

腕に力を込めたままの菜月が小さく呟いたのだ。

「あのね、お姉ちゃん」

菜月は口をもごもごとさせながら私に体をすり寄せてきた。

なぁに?と優しく微笑みながら問いかけると、菜月は体を震わせながら、か細い声で言葉を紡ぎだした。

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