君しかいらない
あたしの体の隅々まで丹念に拭きあげると

今度はパジャマのボタンをゆっくり

惜しむように

かけていく。


「帰る場所がないなら

天使さんの居たいだけここにいていいから」

「あの…あたし天使じゃないし…

もしかしたら人違いしてるんじゃないですか?」


「俺の名前は光輝。

天使さんが俺を忘れていても俺は覚えてるよ…」


長い指であたしの髪をとかしながら

哀しく遠い目をした彼に

あたしはただ黙っていた。


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