女社長は12歳
「……今から……ですか?」

「はい」

オジサンは次に武田のほうを向いた。

「練習の途中申し訳ありませんが、きららさんを社にお連れしなければならないので、連れて帰らせていただきます」

オジサンは武田に会釈し、きららのほうを向いた。

「では車でお待ちしておりますので、着替えが終わりましたら、車にお乗りください」

オジサン達は体育館を出て、横付けにされた黒塗りの車に乗り込んでいった。

「では、練習中、お邪魔したね」

校長も校舎のほうに戻っていった。

「きらら、とにかく着替えて一緒に行きな。何か急な用事のようだから」

「……はい」

武田にうながされ、きららは持っていたビブスを床に置いた。

――おじいちゃん、何の用なんだろ……別にわざわざ学校まで来なくても、夜会えるのになぁ……

きららは着替えながら、そんなことをぼそぼそと呟いた。

着替えを終えてデオドラントスプレーをシュッシュッとやるときららは更衣室を出た。

「お先に失礼します!」

きららは体育館をあとにして車に乗り込んだ。

車は、きららが乗るやいなや、ユルリと動き出す。


――そうだ……アイス…

遠くなる体育館を振り返りつつ、彩とアイスが食べられないことが悔やまれてならなかった。
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