女社長は12歳
――ガチャ

ダイニングのドアが開き、ガウン姿の良造が現れた。

「おはようございます、だんなさま」

「ああ、おはよう」

良造はいつもの席に腰を下ろした。マチ子は良造の前に新聞とコーヒーを置く。

良造は老眼鏡をかけ、新聞を広げながら、きららに言った。

「きらら。今日はお祖父ちゃんと一緒に、ちょっと会社に行こう」

きららは、手に取ったパンを思わず落しそうになった。

「え~? 今日? でも、もう学校に行く準備しちゃったんだけど……」

「今日はお休みじゃ。大丈夫、校長には言ってあるわい」

良造は涼しい顔をして新聞に目を通し始めた。

「……あのさあ、そういうことは、せめて前の日に言ってくれない?」

きららはため息を一つつき、パンをほおばった。
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