女社長は12歳
「おっと! そろそろ行くわ」
 
武田は腕時計を見て立ち上がった。

「きらら、明日は午後練だからな。また明日な」

「はい」
 
武田はそう言って去っていった。

きららはその後姿を見ながら、心なしか気持ちが少しほぐれたような気がした。

武田といるとなにか大きなものに包まれるような、妙な安心感がある。

たいしたことを言われたわけではないが、なにかほっとする。

「あ! やべ……」

溶けたソフトクリームが一滴、下にぽたりと落ちた。

きららは、残っているソフトクリームを思い切り口にねじ込んだ。

「さあて、行くか!」
 
きららは、心地よい風のなか、自転車置き場に向かって歩き出した。
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