きせき。

3年

成雅が事故に遭ってから,3年の時が経った.
あの日,8時間に渡る手術で一命を取り留めてから,成雅は病院のベッドで1度も目覚めることなく眠り続けている.
暗くて狭い生死の境で,どちらに行くこともなくふらふらと彷徨っている.
3年の間に,私は高校2年生になった.
3年前は前から2番目だった背の順も,今では後ろから数えたほうが早くなった.
「凛,伸びたよね!!」
中学からの友達は口をそろえてそういうけれど,成長したのは体だけ.
心はあの日でとまったまま.
私の心を置いたまま,身体はどんどん大人になっていく.
だけど成雅は―――心も身体もあの日に置いたまま.
明るい光に目を細めることさえ叶わずに,ただただ眠り続けている.

「成雅…?」

あの日から,私の放課後は「成雅と手を繋いで帰る」のではなく,「成雅に会う」ことになった.
返事なんてないってわかってるけど,ノックしてから彼の名前を呼んで,病室に入る.
―――植物状態.
3年前の術後,主治医はそういった.
そのまま目覚めることなく…ということもあるらしい.
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