愛してない、
罪悪感は見て見ぬふり
 痩せた体を組み敷き、仰け反った白い喉元に容赦なく噛み付いた。律動に合わせてビクビクと跳ね上がる腰。泣き声にも似た子猫みてえな甘い声が劣情を煽る。濡れた唇から何度となく零れる僕の名前。救いを求めるように繰り返されるそれに、剥き出しになった嗜虐欲が徐々に満たされていく。焦点を見失った、涙の膜を張った瞳が僕の姿を必死に探すから。シーツを掴み震える左手を強く握ってやった。

「……玲奈、……っ」

 密着した肌から伝わる温度が堪らなく愛しい。普段は絶対に見せる事の無い表情を惜しげもなく晒し続ける玲奈に、高まり溢れ続ける支配欲。苦しそうに寄せられた眉、ほんのりと色付いた頬。しっとりと汗ばんだ額に艶のある黒髪が張り付いている。首を振る度にシーツに散るそれが妙に色っぽくて気に入った。

「待っ……待って、玲斗……!」

 誰が待つか。今更なに生温いセリフ吐いてんだよ。馬鹿じゃねえの、聞き入れられるはずがねえ事くらい分かってんだろうが。カマトトぶってんじゃねえ。つい先程まで自ら腰を振っていた女とは思えねえ、不意に逃げ始める腰を掴んで力任せに引き寄せた。

「待ってよ、玲斗は……誰を抱いてるの!?」

 責めるように叫ばれたその言葉に、急激に体温が抜けていくのを感じた。白く塗りつぶされた視界。均衡を失った世界がぐらぐらと揺れる。





 ああ、くそ、黙れ。黙れよ。分かってんだよ。うるせえな。ぐにゃりと歪んだ女の顔を睨みつける。今だけでいい、一瞬でいい。アイツを抱いてる錯覚に溺れさせてくれたって良いじゃねえか。それで我慢するって言ってんだから可愛いもんだろ。ああ、もう。





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