愛してない、
「テメェ……」
「あ?」
「今日何してた?」
思ったよりも、低く抑揚の無い声が空気を震わしたせいだろうか。先ほどまで満面の笑みを浮かべていた玲斗の頬がひくりと引きつり、私を見詰める瞳は様子を伺うように不安な色を宿した。
「今日、何してた?」
「……合コン行ってました」
「へえ」
「い、いや、でも、違うから!
今回はたまたま気が向いただけで――様子見程度に参加しただけだから!」
「そんな事はどうでも良い」
「……へ?」
「別に私は、合コンに行くななんて言ってねえよ。
ただ、問題はそこじゃなくて。その後にテメェは誰と何をして来たかってこと」
「そ、その後?」
ピキ。
「とぼけてんじゃねーよ、アホが!」
怒鳴りながら、肩に置いた手に力を込め華奢な体を突き飛ばしてやれば、玲斗はうわっと間抜けな声を上げ驚いたように目を見開いた。
「な、に……何だよ、いきなり」
「私がアンタのために飯作ってる間、玲斗はどこの女の上に乗っかってたの?」
「……は?」
「そんだけはっきりとキスマーク残してきて、バレねえとでも思ってんのかよ! 調子乗ってんじゃねえ、クソガキが!」
一気に捲し立てた私に、玲斗は薄く口を開くも結局その唇から音が漏れることはなかった。
その傷付いたような表情が、幾重にも重ねた複雑を捲り上げ奥底に沈めた原点に容赦なく突き刺さる。じわりと広がる痛みが、私を責めた。
<ただ、君の笑顔の理由になりたかった>