白衣の悪魔を愛してる
そっか…。



そうだよ…ね。



別にやましいことなんてないし、恥ずかしがることなんてない。



あたしは病人だもん。



保健室の先生であるケイ先生に、今、こうされてるのが普通。



先生の言うとおり、こうして先生に保健室に連れて行って貰えるのも今日で最後なんだし…



いや、バイト先での一件以来、あたし、かなり自惚れちゃってるけど、



もしかしたら、先生の傍にこうやっていられるのも今日で本当に最後かもしれないし…



今は先生の言うとおり、堂々といい子にしてよ。



お父さんやお母さん達…先生達や全校生徒の前でのお姫様抱っこも、



先生になに言われたって、やっぱちょっぴり恥ずかしい…ってことも、



先生の腕のぬくもりも、



この渡り廊下の景色も、



これから待ち受ける現実も、



それも全部、高校生活最後の思い出なんだから。



先生の“答え”がなんにしろ、それが高校生のあたしの思い出には変わりないんだから…。



あたしは黙ったまま歩き続ける先生の胸元から未だ赤みの引ききってない顔を少しだけ上げると、



「先生…」



「あ?」



「あのね……ううん。なんでも…ない。」



「なんだそりゃ。」



ハッと鼻で笑う先生を見つめながらニコっと小さく笑みを浮かべた。

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