白衣の悪魔を愛してる
「うわっ。すっげえ風。」



「うん。」



ギュッと先生のスーツを握りしめたまま少しだけ目線を上に向けると、動く喉仏と少しだけ荒れた唇が見える。



「これって…“春一番”ってヤツだよな?」



「うん。」



再び胸元に顔を埋め、鼻先を擦り付けると、



白衣とは違う、もうひとつの先生の香り…



ほのかなタバコの香りがする。



「春…なんだよ…な。」



「うん。」



「あっという間だと思ってたのに………長かった…な。」



「………うん。」



ゆっくりと瞳を閉じ、耳をすませると、



いつもより少しだけ早めのあたしの音とは全然違う、ゆっくりと落ち着いた先生の音が聴こえる。

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