「岡崎 礼衣」


名前を呼ばれた。

「あなた、こんな成績で大学に行けると思ってるの?」

この前の模試の結果表。
245人中‥‥240位。

「もう少し頑張りなさい。夢に向かって」

夢?

私に夢なんかない。
大学に入るお金も家にはない。
毎月のお小遣すらもらえない。
だったら、自分で稼ぐしかない。




「はぁっ‥‥」

男の口からは
ヨダレが垂れていた。

「礼衣ちゃん、上手いね!」

私はふふ、と笑った。

安くて汚いホテルの一室で、
今日も知らない男と一つになる。

相手が喜ぶような
お決まりの台詞を口にするけど、
言葉とは裏腹に
私の身体は何も
感じていなかった。

どこか満たされなかった。
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