「先生何歳?」
「彼女は?」
「今度英語教えてくださいっ」

若い教師がいる学校で
お馴染みの光景か。

俺、結婚してるけど。

言うのも面倒だし、
結婚指輪も外した。
仕事だからな。

「お、やる気あるな」

とか適当に返しておく。
やる気なんて微塵も
ないんだろうが。


あれ。


一人机に突っ伏せる女子生徒。
あれが岡崎礼衣か‥‥

すると彼女は急に立ち上がり、

「うるさいなぁ‥‥」

と教室から出ていった。

「何あれ」
「聞こえてるっつーの」
「本当うざいよね岡崎」
「援交してんでしょあいつ」
「そーなの」
「噂だけど」
「まあやりそうだよね」

俺にたかっていた女子たちが
俺に聞こえないように
岡崎の陰口を叩く。

「岡崎‥‥って、どんな奴?」

聞いてみた。

「なんか暗いっていうか、無口っていうか‥‥よくわかんない子なんですよ。あたしはちょっと苦手かな‥‥」

一人の女子は言った。

苦手というか嫌ってるんだな‥‥

「あれ、先生どっか行くの?」
「ああ、職員室戻らなきゃな」
「えーっ」

名残惜しそうな女子生徒たちの声を聞いて、教室を後にした。

職員室になんか戻らない。

岡崎という生徒が
少し気になったからだ。
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