地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
会長が、後ろから抱きしめてくれてるのに。

どうしても寂しさと恐怖は拭えなくて。

今がバスタオル1枚とか、そうことは全然頭になく。


「……これじゃ…イヤ………」


会長の腕を引き剥がして、クルリと振り向き……会長の首に腕をまわして、抱きついた。


頭の中には、陸のことも二宮さんのこともない。

ただ誰かに甘えたくて。

でも、会長以外はイヤ。

──会長に抱きしめてほしくて。


自分の状況も忘れて、ただ抱きついた。

お湯に濡れた肌が、ピタリとくっつくように。


「………お願いっ……抱いて……っ……」


耳元に小声でお願いする。

お願いだから、震えが収まるまで……抱いてて。


会長の腕が、背中にまわってきたのがわかると、さらにくっついた。


はやる心臓が、ゆっくりと恐怖から解放されてくるのがわかる。


会長の腕の強さに、陸以上の安心感を感じた。



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