地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
家の車を走らせて、着いたのはこの前…杏が倒れたときに、運び込まれた総合病院。

走って、時間外受付に行き、杏がいる場所を聞く。


「どういうご関係の方ですか?」

「彼氏です!」


不審そうな目で見られて、ちょっと苛立った。


「救命の方ですよ」


受付の女性の声も半分しか聞かずに、病院内を走る。

案内板に沿って、たどり着いた。



近くにいた看護師に、尋ねると……ICUに案内される。

一般病棟でないってだけで、足が震えた。


東雲での事件だったため、杏の友達は誰も来ていない。

親父さん達にも連絡を取ったが、海外にいるため今すぐには来れないらしい。

俺に、杏のすべてを任せられた。



1番…家族に近い俺が来たので、主治医から説明を受けることになった。

小さな会議室のような部屋に通される。


「色々とご事情があられるそうで、彼女は神崎杏樹さんで間違いないですよね?」

ひげを生やした50歳くらいの男性医師。

肯定とするように、頷いてみせた。


「刃物で数カ所を刺されて、何とか一命を取り留めました」


どんなに痛かっただろうと考えると、犯人に対して怒りを覚える。


「しかし、まだ油断は出来ません。今夜が…山場でしょう………」


目頭が熱くなった。







< 520 / 657 >

この作品をシェア

pagetop