地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
病棟にある休憩室に入る。

誰もいなくて、自販機で缶コーヒーを買い、椅子に座った。


「なんで、ヤツに取られるんだよ」

買ったけど、どうしても飲む気にはなれない。

マジで、さっきのことが脳裏に焼き付いてる。

今日から……眠れなくなりそうだ。

あれだけ親密そうにしてるんだから、キスの先をしててもおかしくない。

杏が、ヤツに抱かれるところを想像すると……心臓が止まる。

悔しくて、悲しくて……耐えられない。



思えば、約2年前。

芸能界の事件に巻き込まれた時。


妖弧に記憶と心を操られ……杏と別れさせられた。

あの時は、杏のことを忘れて、妖弧を彼女だと思いこんだ。


疑うこともなく、飽きることなくて毎晩のように肌を重ねてた。



あとから知ったことだが、すべて妖弧から俺とのことは聞かされていたらしい。

どれだけ泣かせたんだろう。

バイトの仕事でさえ、モデル達からイジメられ泣きながらやってた。

アイツをどれだけ苦しめて、ギリギリまで追いつめたんだろう。

依頼の仕事が終わると同時に、ぶっ倒れた。








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