地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
小さい声だった。

普通のヤツなら聞こえてない。

たぶん……会長が、ここにいたとしても……聞こえてないだろう。


でも……。

大切で大切で。

愛しくて仕方ない。

コイツが望むなら……何でもしてやりたい。

どんな小さな表情や声の変化にも、見逃さないようにしてきた。


だから……聞こえてしまったんだ。


“別れて”という……1番聞きたくない言葉を。



「……別れるなんて……嫌だ」

「…………別れて下さい。お願いします……」


嫌がる俺に、頭を下げて……頼んでくる。


それでも……別れたくはねぇんだ。

杏を手放すなんて、考えたこともない。


「……一生……手放す気なんて更々ねぇから」


布団を握っていた手に、自分の手を重ねた。
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