地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ

“「わかったよ」”

その言葉が返ってくると予想してたんだけど。



「誰が待つかよ」

「え……」

「1年の時から、待たせすぎ。今度、ケガで何日も眠るようなことがあったら、そん時は殴ってでも起こすから。医者や、親父さん達に止められたとしても!」

「ギャン!?」

ぶにっと頬を摘まれた。

これは、予想外の返事だけど……要するに「ケガしないように頑張れ」って言ってるんだよね。


「さっさと、救ってこい。早く松沢へ帰ろうぜ、同じ大学……行くんだろ?」

「うん!」

元気良く、満面の笑みで頷く。


「東雲を去るときには、会長にもけじめつけて来いよ?」

「うん…………」


そうだった。

会長のことも残ってたんだ。

ちゃんと伝えなきゃ、本当に傍にいてほしいのは。

傍にいたいのは。


陸なんだって、言わなきゃ。


あんなにいい人なのに、傷つけるあたしは最低だよね。

ずっと、陸から離れた2ヶ月……隣にいて支えてくれたのに。


「杏、全員が全員上手くいくことなんてねぇんだよ。誰かの恋が成就して、誰かが失恋するのは普通のことだ」

「……わかってるよ」


あたしの気持ちがわかっているのか、諭すように話す陸。


「会長を傷つけない方法はある」

「えっ……なに?」

「俺達が別れて、杏が会長の所へ行くことだ」

「そ、それは……っ……ヤダ」


陸と別れたくなんかない。

それだけは絶対にイヤ。
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