地味子の秘密 其の四 VSかごめかごめ
応接間の前に着き、廊下に正座する。


「じい様。杏樹です」


襖の向こうにいるであろうじいちゃんに、声を掛けた。


「入りなさい」

「はい。失礼いたします」


返事をして、部屋の中に入る。



「じい様、何か?」



ちらっと目だけを動かすと、和服を着たご老人が優しげな表情であたしを見つめていた。


年は……じいちゃんと同じくらい。



「そこへ座りなさい」


じいちゃんから指定された場所に座布団を敷いて座る。


「杏樹。こちらが、先程お越しになられたお客様じゃ」


右の手の平をお客様の方へ向けて、あたしに説明した。



「こちらはな、朝比奈八雲(あさひなやくも)さんじゃ」



朝比奈八雲………?


その時初めて、真っ正面からお客様の顔を見た。
< 97 / 657 >

この作品をシェア

pagetop