君のホームランで、連れてって!!
君と初めて
第一試合が近づいて来た。
「悠!」
「菜緒!」
菜緒と悠は、練習が終わってから待ち合わせをしていた。
もうすぐ、夏の大会が始まる。
そうしたら、2人が話す機会なんて少なくなってしまう。
2人とも分かっていたからだ。
「ごめん。菜緒、待った?」
悠は、ハァハァと息を切らしていた。
菜緒は、優しく手をひいた。
「行こっか」
「うん」
菜緒と悠は歩き始めた。
残りわずかな時間を、
あたしたちは、
俺たちは、
進み始めていた。
「悠!! はやくはやく~!!」
菜緒が、悠を手招きして何人も並んでいる列に入った。
「え~菜緒並ぶの?」
「もちろん!! 当たり前でしょ!?」
菜緒は、限定品によわい。
今日も、菜緒が好きなアニメのキャラクターのグッズのために並ぶことになったのだ。
「暑~ッ。まだかよ」
悠が迷惑そうに言った。
「ごめん、ごめん。ちょっとだけでいいから。ねっ?」
菜緒が悠を宥める。
悠も飽きれた顔をした後に、少し笑って
「仕方ないなぁ~」
と照れながら言った。
それが、菜緒と悠なりのデートだった。
「初デート」