殺桜
――…大桜は人を食う。
俺は君を愛していた。
この世界中の、
誰よりも、
なによりも。
自分の命よりも。
だからこうするしかなかったんだ。
「…私を殺して」
桜がよくにあう色が真っ白の彼女は、真っ黒の深い瞳で言う。
彼女は本気だった。
なぜ、命をたちたいと思ったのか、彼女はなにも言わなかった。
黒い腰まであるストレートヘアーを風になびかせ、戸惑うほどまっすぐ俺を見ていた。
それはまだ、俺が正気を保っていた時だった。
次の日、大きなスコップをもって桜の地面を掘っている彼女を見かけた。
理由は痛いほど分かってしまった俺は、もうその時、昨日の言葉に対する決めていたのだろう。
その次の日、彼女から手紙をもらった。
「明日、桜並木で」
なぜだろうか。
なにも怖い事はなかった。