殺桜
やがて、明日はやってきた。
夜中だ。
明日が今日になったばかりの時間。
桜が月明かりに照らされ光っていた。
その中に、彼女はいた。
「…来てくれたんだね」
微笑むな。
馬鹿、微笑むなよ。
そんなに、優しくされたら。
「あぁ…」
俺はそっとナイフを隠した。
彼女は桜の花弁をまとい、今までで一番綺麗だった。
「ねぇ、泣かないで…?」
なんでお前はなかないんだ。
それほど、この世界を嫌っていたか。
この世界に別れをつげる事が悲しいなんて、ないのか。
「……ナイフ持って」
彼女は隠したナイフを前にむけさせた。
しっかりもってね、そう言って俺の手に触れる。
……冷たい。
まるで死人のように、冷たい手だった。